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仙台高等裁判所 昭和31年(ネ)71号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は『(一)、原判決を取消す。(二)、被控訴人労働保険審査会が控訴人の審査請求に対してした「富岡労働基準監督署長がなした遺族補償費の一〇〇分の五〇に相当する額を支給しないとする決定を取り消し、一〇〇分の四〇に相当する額を支給しないとする。その余の請求は立たない。」との昭和二七年六月九日付審査決定中、「一〇〇分の四〇に相当する額を支給しないとする。その余の請求は立たない。」との部分を取り消す。(三)、被控訴人労働保険審査会が控訴人の審査請求につきなした昭和二七年六月九日付審査決定を取り消す。(四)、被控訴人福島労働者災害補償保険審査官が控訴人のなした審査請求を棄却した昭和二七年二月一五日付審査決定を取り消す。(五)、被控訴人富岡労働基準監督署長が控訴人に対し労働者災害補償保険法第一九条により昭和二六年九月一三日の出水事故の罹災者根本亮及び石本喜代治の遺族補償費の一〇〇分の五〇に相当する額を支給しないとする同年一〇月二五日付決定を取り消す。(六)、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。』との判決を求め、被控訴人ら三名の指定代理人らは控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において「被控訴人労働保険審査会(当時は福島労働者災害補償保険審査会)が被控訴人富岡労働基準監督署長のなした決定と異なる決定をしたからとて、後者の決定が直ちに無効となるものではなく、被控訴人富岡労働基準監督署長自ら又はその上級官庁においてこれを取り消さない限り、右決定は依然としてその効力を存続するものとなすべきであるから、控訴人の被控訴人福島労働者災害補償保険審査官(当時は福島労働基準局保険審査官)及び被控訴人富岡労働基準監督署長に対する訴は、いずれもその利益があるものである。」と述べ、被控訴人らの指定代理人らにおいて、控訴人の右主張を否認すると述べたほかは、すべて原判決の事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

(立証省略)

理由

一、当裁判所は次の理由を付け加えるほか原判決と同一の理由により控訴会社の被控訴人富岡労働基準監督署長並びに被控訴人福島労働者災害補償保険審査官に対する各請求は、いずれも訴の利益がないものとしてこれを棄却すべきものと判断するから、原判決のこの点に関する理由摘示をここに引用する。控訴会社は、被控訴労働保険審査会(当時は福島労働者災害補償保険審査会)が被控訴人富岡労働基準監督署長のなした決定と異なる決定をしたからとて後者の決定が直ちに無効となるものではなく、被控訴人富岡労働基準監督署長自ら又はその上級監督官庁においてこれを取り消さない限り、右決定は依然その効力を存続するものとなすべきであるから、控訴会社の被控訴人福島労働者災害補償保険審査官(当時は福島労働基準局保険審査官)及び被控訴人富岡労働基準監督署長に対する訴はいずれもその利益があると主張するけれども、被控訴人富岡労働基準監督署長が労働者災害補償保険法第一九条に基きなした控訴会社主張の昭和二六年一〇月二五日付保険給付に関する決定並びにこれに対する控訴会社の審査請求を棄却した被控訴保険審査官の昭和二七年二月一五日付審査決定が被控訴審査会の決定により取り消された以上、前二者の各決定はその効力を失い、いずれも初めから決定がなされなかつた状態に復するものと解すべきであるから、控訴会社の右主張は採用することができない。

二、次に当裁判所も控訴会社の被控訴人労働保険審査会に対する本訴請求は理由がないものと判断するところ、その事実の確定並びに法律上の見解は原判決と同一であるから、原判決のこの点に関する理由摘示をここに引用する。当審証人伊藤儀作(一部)、鈴木茂七、高橋正の各証言を参酌すれば、控訴会社主張の本件事故は控訴会社の重大な過失によつて惹起せられたものであることの心証を益々強うするに足り、甲第十八号証の記載、当審証人鈴木茂養、伊藤儀作の各証言中、右認定に反する部分は、いずれも措信し難く、当審に現われたその他の証拠によるも、右認定を覆えすに足らない。

三、右と同趣旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がなく棄却すべきものとす。

よつて民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。(昭和三三年四月七日仙台高等裁判所第二民事部)

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